ツッキーの息子 秀一の『日本一給食がおいしい学校』での1日
ツッキーの息子秀一は5歳。以前なら,幼稚園の年中さんであるが,
今彼は横浜の郊外にある彼の父親も卒業した小学校に通っている。何故?
200○年の関東道の発足に伴い,学校教育は激変した。
最大の変更点は3つ。一つ目が幼小中高の制度の抜本的転換,
二つ目が学校教育の完全民営化,
三つ目がカリキュラム単位のバウチャー制である。
一つ目の幼小中高制度の転換により,道ごとに,さまざまな形態が生まれた。
関東道では,6・3・5年制を基本とし,
一貫校ではフレキシブルな対応を可能とした。
義務教育を2年間前倒し延長したのが,関東道の特徴であり,
今秀一が小学校に通っているのは,そういうわけなのである。
小学校では,知識教育を排除し,知能教育,
人間性教育に特化した教育内容とした。
もちろんチャーター等さまざまな取り組みが開始され,
ツッキーの政策提案はここが原点となっている。
二つ目の民営化も関東道だけの政策である。
都市近郊型の地域がほとんどであるため,市民を巻き込んだ激論の末,
一定のガイドライン,チェックシステムによって,
完全民営化でも問題は解決できるとの結論に達した。
ガイドライン,チェックシステムには,教育委員制度の抜本的改革を導入した。
こちらも無作為抽出候補からの提案制により,
希望者すべてを委員とする大胆なシステムを導入した。
最初は予想をはるかに上回る希望者に,教育委員会はパニックになったが,
現在では,教育委員の活動を支える重要な組織となっている。
民営化は学校単位のコンペティションにより住民投票で運営母体が決定された。
秀一の学校も,教育図書会社,塾経営会社,教育NPO,
居酒屋を中心とする外食企業の4社によるコンペとなった。
各社とも,企業の特徴をコンセプトとした教育内容をPRしコンペに望んだのである。
この住民投票では,満5歳以上に投票権が与えられた。
これが勝敗を決めた。子供たちが行きたがった学校。
それは何か・・。ダントツの得票を獲得したのが,
居酒屋が掲げた『日本一給食がおいしい学校』だった。
もちろんただの居酒屋ではない。
10年ほど前から農園経営,学校経営,福祉ビジネス等々に参入し,
各方面での評価を得ていた。
親たちは,知能教育そのものへの取り組み方針に票を入れ,
地域の人々は,居酒屋や農園経営から蓄積された人間性教育に票を入れた。
そして子供たちは『日本一給食がおいしい学校』に票を入れたのである。
『日本一給食がおいしい学校』は,食育も日本一を目指している。
今日は,秀一たち1年生全員がバスで農場体験に行く。
いつも食べているおいしい野菜がどのように作られているのかを,
自分の目で確かめ,農作業の手伝いも行い,
食や農の大切さ,社会の仕組みを学ぶのである。秀一はツッキー似で,クラス一のわんばく。
農場の牛たちも,ちびっこギャングの来場を楽しみに待っているのである。
もうひとつの改革,カリキュラム単位のバウチャー制も少しだけ紹介しておこう。
完全民営化としたため,経営側の努力と選択肢の多様化を狙って,
カリキュラム単位のバウチャー制を導入した。もちろん,
他の学校でのバウチャー利用もOKである。
小学校では,バウチャーは語学のみだが,秀一は,
ツッキーのアドバイスを参考に,英語と韓国語にバウチャーを利用している。
この韓国語も大変楽しいようだ。さすが居酒屋である。
最初の授業は,居酒屋での焼肉パーティー,
キムチやプルコギがら学びをはじめるのである。これは忘れない・・。
ツッキーも,毎日楽しそうな秀一の姿に目を細めている。
ただ,今夜は険悪なムード。親と子が一緒に学ぶ来月のオープンスクールへ,
夫が行くのか,ツッキーが行くのかでもめているのである。
実はツッキー,今までこのオープンスクールを独占してきた。
夫には内緒だったのだが,実は『日本一おいしい給食』が食べられるのである。
直営農園で採れた,完全無農薬の有機野菜が最高なのである。
ここで食べるまで,ほうれん草が,生で食べられること,
それがとっても甘いことを,さすがのツッキーも知らなかった。
それ以来,やみつきで通っていたのだが,
先月その様子がテレビ放映され,幸せそうなツッキーが映り,
それを夫が見てしまったのである。
今日の険悪ムードは,夫が『俺に行かせろ』と主張しているためである。
ツッキーは,憮然としてそれは私の権利よ,
とゆうような顔をして夫をスネさせている。
でも内心は,譲ってあげようと,
夫が何を条件に提示してくるかを楽しみにまっているのである。
この余裕はなんなのか,実は,秀一のクラスの仲良し母親グループで,
この居酒屋の農園にある,野菜レストランへ行くことにしているのである。
食は強し,母も強し。