■会報96号 2006.1.15■

山繭織りで繁盛した可部の町に、正月の門松は樫の木を使ったという話を聞いたことはあるものの、実物を目にしたことのあるカラスは一羽もおりません。ところが、その願いが叶えられるという朗報がはいってきました。

12月初旬、歴史部会担当の女性メンバーが集まって、"何とか樫の門松を作ってみたい"との願いを、門松を作った経験のある可部三丁目の朝枝 基さんに相談したところ、"そんなら、一緒に作ろう"と話がまとまり、実現への道程が見えてきました。

決まれば、動きの速いのがカラス。木の切り出しから飾り付けまでの日程を決めて、行動の開始です。場所は旧道で古い家屋の趣を残して改築された三木邸、28日午後1時から飾り付け、正月5日まで飾り付ける予定としました。
飾りつけの当日、三木邸と隣の松井邸にも、近所のご好意で幕が張られ、初めて作業を見ようとおおぜいの人たちが、熱い目で見守る中で門松が立てられます。道路の向い側から指示を出される朝枝さん。柱となる2本が立てられ、横にも通して、真ん中に“注連飾り”をつけて完成です。樫の木会のメンバーの友近さんは「嬉しさで一杯よ。朝枝さんから“やろう”言われたときには歓声に包まれて…」と語ってくれました。

 

樫の門松はいつ始まって、いつ頃終わったの
 いつ頃から樫の門松を立てるようになった不明だが、郷土史研究家の下野岩太先生は、商業文化が発達した徳川時代からではあるまいかと、可部町『はなし百話』の中に記述されています。なお、朝枝さんの話によると、可部で朝枝さんと入江呉服店が昭和10年頃まで飾った記憶があるとか。
どうして樫の木で飾ったの 
 山繭で繁盛した可部の町、山まゆの幼虫が食べる樫を飾って、山繭に対するお礼の意味があるようです。
1軒では淋しいと思われますが
 樫の門松は幕と良く合い、落ち着いた雰囲気があります。町の人たちにも好評だったようです。来年からできれば数を増やし、可部の正月風景づくりになればと思います。
役割を果たした樫の木の行方は
 「二丁目町内会」の皆さんのご好意で、18日に行われた“とんど”の火で送っていただくことができました。
 しばらく活動を休んでいた歴史部会が昨年3月に眼を覚ましました。「何から手をつければよいかしら」と、いろいろと話しあった結果、なんとしても可部の歴史に基づいた民話や伝説を紐解いてみようと意見がまとまり、活動を再開しました。
 そしてグループの名前も「樫の木会」に改名、最初に思いついたのは、以前から関心があった、可部と縁の深い山繭と樫の木の正月飾りに話が弾み、取り組みはじめた民話づくりが「樫の木ものがたり」です。
 樫の木会の活動は民話づくりにとどまりません。実際に樫の木の門松をつくってみようということになり、可部でただ一人、樫の木の“正月飾り”を実際に作った経験をお持ちの朝枝さんに指導をお願いしました。朝枝さんも「それではやってみましょう。」とこころよく応じていただき、今回の運びとなりました。
 そこで元気の出た樫の木会の皆さんが、三木さん宅へ協力のお願いや近所への協力依頼までして回り、手筈を整えました。こうして、カラスの会をはじめ、各方面へ樫の門松づくりについて協力を依頼し準備作業に入りました。こうした動きによって、今回のすばらしい企画が成功できたと感じています。
 三木さん宅への飾りつけの日、設営に当たるカラスのメンバーはもとより、持田組の方にも手助けを頂いたり、近所の皆さんからも多くの応援をいただくことができたようです。
 以前、高松山の登山道を再整備したり樹木や植物の案内板を取り付けて、高松山の魅力づくりに取り組んだパワーを再現してくれました。
まさに、“味なことやる”グループですね。

 可部の旧街道に昔の賑わいを取り戻そうと、熱心な活動を続ける“可部夢街道まちづくりの会”の皆さんは、いろんな分野で活動を展開しています。
 昨年は、昔の衣装で“フラワーフェスティバル”にも参加、“かよこの嫁入り祭”では、可部のパワー全開で、豪雨の中見事にパレードを成功させました。
 更に10月には“可部夢街道と花の散歩道まち案内”で千人以上のお客さんを町に呼び込むことに成功しました。数え上げれば際限がありませんが、こうした派手に見える活動だけでなく、可部駅西口再開発や可部にふさわしいモニュメントづくりに全力を挙げて取り組んでいます。

 

 モニュメント(記念のしるし)といっても、動きのない記念碑では面白くありませんね。くつろぎと同時に可部へ来たことを実感できるものにしたいと、広島市立大学の吉田先生を中心に、担当のメンバーは首をひねっている最中です。
 そうは言っても、のんびりと考える時間はありません。近いうちに結論を出す必要があります。
 そのほか、バスの待合所などには、昔の可部をイメージした造作が組み込まれるようです。町の皆さんには“可部夢街道まちづくりの会報 かわらばん”を通じて逐次お知らせされる予定です。
 もう一つ、朗報です。今まで実現の方向が見えなかったトイレの問題も、どうやら設置の方向で検討されると聞きましたが、もう少し整理してからお知らせします。

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