山﨑神社 【可部の町かど】
【下野岩太先生著 可部のまちかど78】
今井田は江戸時代初めのころは四日市村に属していたが、寛永15年（一六三八年）土地改めのとき分離して
今井田柳瀬村をつくり、明治二十二年の町村制施行の際、大字「今井田」して残った歴史かおる。
太田川に沿って東西に細長く、数十戸の家が肩を並べて集落をつくっている。
今井田八幡は、この集落のやや下手の山すそにある。
所の人は、八幡さん’または、今井田八幡’と呼んでいる。
『芸藩通志』では楽音寺古神名帳にある 「山前明神」をこの宮に当てている。
そうするとその沿革は鎌倉時代以前にさかのぼることとなる。
現在この宮の幟、または本殿横の移転の記録には「山崎神社」と記してある。
祭神は神宮皇后という。
明治四十二年に大毛寺の両延神社に合桐されたが、昭和二十七年に再び現在地に勧請された。
日清・日露の両戦役を通じてここからは一人の戦死者もなく、
また今次の太平洋戦争でも同所十五戸から九人が出征したが、全員帰郷した。
これはこの宮の神徳によるものである、と所自慢の一つになっている。
境内は三段に区分され、イチョウ、クス、ヒノキなどの老樹が数本立ち重味を加えている。
一の段には石鳥居、石灯龍が風格を整えて立つ。
特に3mに及ぶ灯寵の中台に書かれた「献灯」の二字は豪快、重厚で、
見る人をして立ち止まらせるに十分な貫録がある。
これは同所の竹内春作が嘉永元年（一八四八年）十四歳のとき氏子からその卓越した筆才を認められ、
懇請を受けて書いたものである。同氏は両延神社の末田重村に学び、
明治に入り県議会議員を二期五年間、亀山村長二期六年間など、地方行政の重職を歴任した。
同所における竹内春作の名は前記の行政実績に加えて、こ
の宮に奉納した「春作十四歳の時の書」ということで、語り草を一層豊かにしている