■町並み保存の取り組み■

  可部は,石見街道,出雲街道,そして太田川舟運の拠点として,栄え,現在でも古い町並みが残り
情緒あるれる風情を醸し出しています。
しかし,こうした町屋の維持は,大変で,毎年いくつかの町屋が取り壊され,駐車場やモダンな建物
に変わっています。
 部外者がただ単に,保存しようというのは,あまりにも無責任です。
けれど,こうした町屋は可部の大切な資源であり,文化です。
とても難しい問題ですが,生活と文化を共存させる方法は無いのでしょうか。
 今回,会員の三木さんと加納さんが,そうした共存の有り方の一つを実現してくれましたので,
ご紹介させていただきます。
 三木さんのお宅も古い町屋で,今回その改修を,建築士の加納さんに依頼されたものです。
 こうした共存が,可部のまちにどんどん増えて行くよう,私たちも何らかのお手伝いをしたいと
考えています。


                           

         


          
                      施工前                施工中

 
 広島市北部、可部町の旧道に建つこの民家は、昭和2年(1927)に建築された。
当時は履物店、後に理髪店として 利用されてきたが、閉店を機に改築することになった。
 この建物の両隣をはじめ周辺は明治、大正時代に建築され た民家が有り、町の歴史が感じられる地域である。しかし近年これらの家が減り、駐車場や現代的な建物に変わり つつある。 
 このたび施主の希望により、古来の意匠を踏襲しながら、近代の生活にふさわしい民家の再生をする ことになった。 
 実施設計に先立ち、内部の造作を取り払って調査したところ、建物内部(店舗部分)は2階を支 える柱が極端に少なく、また道路側の外部柱においては、その多くの根元が腐っており、強度が無くなって、2階 の道路側が下がっており、早急な補強対策が必要であった。
 そこで、2階をジャッキで持ち上げておいて、1階の 柱の取替えや増設、スジカイの取付けなどの補強工事を行った。
 既設の土台も、内外ともに腐れがひどかったので 全てを取り払い、既設の土間の上に鉄筋コンクリ−トでベ−スを作った後、長石を敷き、新しい土台を乗せ、柱を 建てた。
 一方、内部の丸太梁と軒を支える大きな角梁は、先祖の遺産として残し意匠的な配慮をした。新しく取り つけた窓には格子を取付け、外壁は1、2階とも従来のシックイ塗りとしたが、2階のサッシュは既存のままと し、傷みがかなり進んでいた【うだつ】は修復した。
 この結果、施主の希望を満足させる「民家の再生」が出来た。
 工事期間 3、5ヶ月、工事費(電気、空調設備含む)は 86、500円/uであった。
                                      
(株式会社加納設計)   

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